安心して働くための権利

  学校は無給の時間外勤務が日常化し、教職員の約7割が過労死ラインを超えています。時間外勤務をなくさせていく取り組みとともに、これまで私たちの先輩方ががんばって獲得してきた「働く権利」を確実に行使していくことも重要です。
  どの学校でも、基本的な働く権利をお互いに意識し、元気いっぱいの先生も配慮が必要な先生も、みんなで力を合わせることのできる「働きがいのある学校」をつくりましょう。


もっとも基本的な働く権利〜年次有給休暇

年次有給休暇(略称「年休」あるいは「有給」)は、多くの働く権利の中で、もっとも歴史がある基本的な権利です。その大きな特色は、「特段の理由がなくても成立する」ことです。

① 年次有給休暇の「自由利用」

〇年休は「与えられるもの」ではなく、労働者の「権利」として保障されています
〇労働基準法や条例上の要件(勤続年数など)が満たされれば、年休の権利が当然に発生します
〇年休をどのように利用するかは、労働者の自由であり、使用者(教育委員会や管理職)が理由に干渉したり、理由によって取り消すこともできません
〇年休を取得する際に、理由を言う必要はまったくありません

② 取得の方法

〇年休は権利ですから、「年休願い」などの形式は誤りです。「届け」にしなければなりません
〇年休は、届け出れば自動的に成立します。事前届けが基本ですが、電話や他の人づてでもかまいません。緊急の場合は、事後の届け出でも差し支えないことになっています
〇取得は「1時間単位」です。1時間未満は切り上げられます。丸1日取得した場合は、7時間45分取得したものとして累計されます

③ 休憩時間をまたいで取得する場合

〇昼の休憩(45分)をまたいで年休を取得する場合は、休憩時間を差し引いて届け出をします
【例】10:00~14:45に取得する場合は→休憩45分を差し引いて、4時間の取得

④ 日数と繰り越し

〇労基法では年休は就労2年目から6日(以後毎年1日増加)ですが、山形県の学校職員は、初年度から20日の年休が取得できます。
〇前年に残った年休の日数は、20日を限度として翌年に繰り越すことができます。

⑤ 当局の時季変更

  労働基準法39条に「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」とありますが、これは当局(校長)が承認の権限を持っているということではありません。年休は労働者固有の権利であり、時季の変更を労働者に願い出ることができるという意味です。職場が閉鎖状態になるなど、よほどのことがない限り時季変更はできません。(これまで時季変更した校長はいません)

  年休の取得率が低いのは、代わりの人への気遣いのためと言われています。お互いに取得しやすい職場の雰囲気と支え合いが大切ですね。
  年休は遠慮なく、積極的に取得しましょう


有給のまま勤務しない権利〜特別休暇

  有給のまま勤務を要しない、とされているのが「特別休暇」(特休)です。年次有給休暇(年休)は自由な行使が保障されていますが、特別休暇は一定の目的や要件に合致していることが必要で、地方公務員法の「職務専念義務の免除」の形をとっているため、原則として当局の「承認」が必要です。

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◆賃金への影響は?

特別休暇は「有給」での職務専念義務の免除ですので、毎月の給与には影響を与えません。また、期末手当にも影響はありません。ただし勤勉手当は、休暇期間が30日を超えると支給割合により減額されます。(「休職」になると、期末手当も減額されます)

◆講師の方は?

講師の方は取得できる特別休暇は限られています。組合では、講師の方の特別休暇を拡大し、安心して仕事ができるよう交渉を続けています。

  組合の交渉によって、様々な特別休暇を拡大してきました。また、その運用についても、先生方が取得しやすいように様々な確認を積み上げてきています。申請する際は、ぜひ組合にご相談ください。


様々な手当は「給料の一部」です

  教職員には、毎月の給与(月例給)に加えて、様々な諸手当があります。しかし諸手当は、何かと理由をつけて削減が繰り返されています
  諸手当は、決しておまけではありません。どれも生活に必要な「生活給」であり、給与だけでなく諸手当の引き上げを求めることも、労働者の重要な権利です。
  組合では、これらの諸手当は重要な「生活給」であると位置づけ、その改善のために毎年交渉を積み重ねています。

1 期末手当

基準日(6月1日、12月1日)に在職する職員に支給。基準日以前の3か月間の在職期間によって、支給割合が変わります。このため、4月採用の初任者や臨時講師は、満額支給されません。

2 勤勉手当

期末手当と共に支給されますが、人事評価のうち「直近の業績評価」によって支給割合がかわります。組合の交渉によって、山形県ではこれまで手当が人事評価によって上下した教職員は出ていません。

3 通勤手当

片道2km以上の通勤距離に応じて、2,000円~25,500円の範囲で支給されます。

4 扶養手当

配偶者(内縁関係も含む)、18歳未満の子、重度障がい者の数に応じて支給されます。

5 住居手当

家賃の月額から11,000円を控除した額が支給されます(2019度の改悪で引き下げられました)

6 寒冷地手当(11月~3月まで)(改悪され大きく削減されました)

扶養親族のある世帯主   17,800円
その他の世帯主      10,200円
その他の職員        7,360円
(改悪が続き、現在は庄内地方は支給されません)

7 義務教育特別手当(2014年度改悪で大きく削減)

号給に応じて   月額 2,100~7,100円
(以前より半額以下に改悪されています)

8 僻地手当

給料月額に次の割合を乗じる額
準級  100分の2
1級  100分の4
2級  100分の6
(割合は以前の半分以下に改悪。また僻地指定の廃止も増えています

9 特殊業務手当

第1号  非常災害時等の緊急業務  7,500~8,000円
第2号  宿泊を伴う行事        5,100円
第3号  大会等の引率         5,100円
第4号  部活動指導(3時間程度)   2,700円
(2019年度に3,600円から改悪されました)

10 管理職だけ特別に優遇する「管理職員特別勤務手当」

緊急または臨時に休日に勤務したとき、管理職にだけ支給されます。組合では、管理職のみを過大に優遇するものとして、廃止を要求しています。
校長  6,000円    教頭  4,000円


これからの権利拡大

  わたしたちの先輩の先生方の努力で、教職員の働く権利は大きく拡大してきました。しかし、今の社会の状況から、これから実現が求められる権利もまだまだあります。
  みんなの力を合わせて、これから長く働く仲間のために、要求を大きくしていきましょう。。

1 毎日、ちゃんとした「休憩時間」を!

  休憩時間は、労働基準法に必ず取るよう明記されていますが、実際に学校で取れている人は、誰もいません。この不正常な状態の改善、つまり、交代で休憩時間を取れるよう先生の数を増やすことが必要です。

2 正当な「時間外手当」の支給を!

  教職員は、毎日勤務時間を超えて「タダ働き」です。もし今の時間外勤務の実態のまま、市や県の行政職員と同じ時間外手当が支給されると試算すると、教員の手取りはほぼ倍!になります。
  「変形労働時間制」は、この「タダ働き」を合法化しようとするもので、絶対に導入させてはなりません!

3 介護休暇の拡大を!

  介護休暇は、ようやく半年まで取得できるようになりましたが、いまだに「無給」です。(休暇を取った分が給料から引かれる)
  組合では、少なくとも1年に延ばすよう要求しています。

4 育休を有給に!

  育休は、いまだに「無給」のままです。ヨー ロッパの多くの国では、育児休業中の給付金も 賃金の80~100%ですが、日本はまだ50%にとどまっています。安心して子育てをする環境を整備することは、社会全体の責任です。

5 教員のキャリアアップのための身分保障を!

  多くの先進国では、現職教員の研修が充実しています。ヨーロッパの多くの国では、公立学校教員の身分のまま、学校現場を離れて大学などで長期間研修をすることが認められています。
  一方、日本で大学で研修できるのは、教育委員会が推薦したわずかな人だけです。おまけに教員免許は10年間の有効期限付き。この差 は何でしょうか。

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